医師INTERVIEW
医療法人社団 寿恵会理事長
三鷹東クリニック院長
田中 慶太
Keita Tanaka
01なぜ訪問診療ネットワークを選んだのか
大学を卒業してから10年間、消化器外科医として働いてきました。もともと「医療のないところに診療所を作りたい」という夢があり、沖縄の久米島や長崎の五島列島で7年間、離島医療に携わりました。何もない環境の中で地域の方々と向き合いながら、「困っている人のそばに行くこと」こそ自分の医師としての原点だと感じました。コロナ禍で病院医療が止まったときも、家で療養する方を支える訪問診療に出会い、その思いがさらに強まりました。最初に勤めた訪問診療での職場では多くの患者さんに出会えた一方で、継続的に関わることの大切さを実感しました。その中で、より一人ひとりの患者さんとじっくり関われる環境を求めて出会ったのが、訪問診療ネットワークです。ここには、責任を持って診療できる仕組みと、志の高い仲間がいて、面談の際に「ここでなら理想の医療ができる」と確信しました。
02仕事のやりがい、魅力
訪問診療で一番のやりがいを感じるのは、患者さんの笑顔に出会えたときです。大阪出身ということもあり、「笑いを取る」のは僕にとって自然なこと。笑顔が生まれると、その人の心がふっと軽くなる気がします。身体の健康を支えるだけでなく、心を癒すことこそ医療の原点だと感じています。ある患者さんが「先生に似たドクターをアメリカで見つけました」と言って、『パッチ・アダムス』のDVDをプレゼントしてくれたことがありました。その時「ああ、間違ってなかったな」と、とても嬉しかったのを覚えています。僕が目指しているのは、まさに“笑いと笑顔で人を救う医療”なんです。認知症の方も多く、昨日のことを覚えていない方も少なくありませんが、毎回同じ話で笑ってくれます。その笑顔を見るたびにこちらが元気をもらいます。意識のない寝たきりの患者さんでも耳や目は最期までご健在です。どんな場面でも笑顔や笑いを届けるようにしています。患者さんを「守る」だけでなく、一緒に楽しむ気持ちで診療に向き合うことを大切にしています。僕自身も楽しめているからこそ、また明日も行きたいと思える。困っている人のそばに行って「ありがとう」と言ってもらえる、その一言が、何よりのやりがいです。
03働く上で大切にしていること
仕事をする上で一番大切にしているのは、自分自身の健康です。疲れ切った医者に診てもらいたい人なんていないと思います。だから、どんな日でも元気でいるように意識しています。そのために大切にしているのが、仕事以外の時間で心をリセットすること。僕の場合は、時間があれば一人で少しお酒を飲みに出かけ、出会った人と話す時間を大切にしています。
初めて会う人と交わす何気ない会話の中に、日常のリアルやさまざまな価値観があって、それが自分の視野を広げてくれます。医療には、エビデンスよりもエクスペリエンスという一面もあります。勉強も大切ですが経験の積み重ねも大切です。訪問診療では、一人ひとりに合わせた“オーダーメイドの医療”が求められることも多いので、身体だけでなく心も健やかでいること、前向きに人と向き合える自分であり続けることが、良い医療につながると感じています。
04訪問診療ネットワークのおすすめポイント
訪問診療ネットワークの魅力は、患者さん一人ひとりにしっかり向き合える環境と、それを支えるチーム体制が整っていることです。特に看護師のレベルが高く、意見を交わしながらお互いを補い合える関係ができており、安心して診療に取り組むことができます。法人全体でも情報共有が活発で、より良い体制を築こうとする前向きな文化が根付いています。医師同士の風通しも良く、誰にでも相談しやすい雰囲気があるのも特徴です。頑張った分だけきちんと報酬に反映される仕組みも整っており、自分の努力がしっかり形になる実感が、働くモチベーションにつながっています。
05これから挑戦したいこと
今後は「どんな医師が来てもすぐに実践できる仕組み」をつくりたいと思っています。訪問診療って、どうしても「経験がないと難しい」と思われがちですが、誰でも安心して始められるようにしたいです。昔、私が医師を始めたの頃に持っていた“小さなマニュアル”のように、「これがあれば大丈夫」と思える訪問診療版マニュアルを作ろうとしています。現在、ネットワーク内でも同じ考えの医師が集まり、マニュアルプロジェクトが進行中です。どんな医師でも早く慣れて力を発揮できるように、知識や経験を共有する仕組みを整えたい。そして、熱意のある医師たちと一緒に、より良い医療の形をつくっていけたらと思っています。
06ご検討中の先生方へ
訪問診療に興味がある医師に伝えたいのは、「熱意のある人に来てほしい」です。ときには大変な場面もありますが、その分、患者さんの笑顔や言葉に救われる瞬間がたくさんあります。笑ってくれるだけで嬉しくなり、「また明日も頑張ろう」と思えます。そんな笑顔と笑いのある医療を一緒に作っていきたいと思います。私はよく患者さんと冗談を言い合いますが、そうやって心が通うからこそ、私の医療を受け入れていただけます。困っている人のそばで、笑顔とユーモアを忘れずに寄り添える、そんな仲間と一緒に働けたら嬉しいです。